一年を締めくくる12月。日暮れが早く、炉の火と灯火のあたたかさがひときわ身に沁みます。冬の夜長を楽しむ「夜咄の茶事」、事始めや煤払いで新年を迎える支度が進み、冬至を境に陽は再びめぐりはじめます。慌ただしさのなかにこそ、一服の茶が深く静かに響く月です。
12月の茶花
白玉椿しらたまつばき
まるく整った白い花を咲かせる椿。清らかで格調高く、あらたまった冬の茶席に用いられます。
水仙すいせん
凛と立つ細い葉に、香り高い白と黄の花。雪のなかでも咲くことから「雪中花」とも呼ばれます。
南天なんてん
冬に赤い実を房なりにつける常緑樹。「難を転じる」に通じるとして、年の変わり目に喜ばれます。
万両まんりょう
葉の下に赤い実を下向きにつける低木。縁起のよい名から、年末年始の取り合わせに好まれます。
蝋梅ろうばい
蝋細工のような透明感のある淡黄色の花。冬枯れの季節に、甘くやわらかな香りを届けます。
寒菊かんぎく
寒さのなかで咲き続ける菊。慎ましくも力強い姿が、冬の茶席を引き締めます。
12月の茶道の銘
茶席では、茶杓(ちゃしゃく)やお菓子、掛物などに季節にちなんだ「銘(めい)」をつけて趣を添えます。 ここでは12月・師走の茶席で使われる茶道の銘を、読み方と意味・由来とともに43種ご紹介します。稽古やお茶会で銘を選ぶ際の参考にどうぞ。
師走しわす
12月の異名。師(僧)も走り回るほど慌ただしい月、という説が知られています。
年の瀬としのせ
年の暮れ。川の瀬のように慌ただしく過ぎゆく時をあらわします。
歳晩さいばん
年の終わりごろ。改まった趣のある銘です。
年惜しむとしおしむ
過ぎゆく一年を惜しむ心。名残の情趣を年の単位で味わいます。
数え日かぞえび
年の暮れ、残る日数を指折り数えるほどになった頃。
行く年ゆくとし
過ぎ去ろうとしている年。感慨を込めた銘です。
除夜じょや
大晦日の夜。鐘の音とともに一年を送ります。
年越としこし
旧年から新年へ移ること。区切りの心持ちをあらわします。
大雪たいせつ
二十四節気のひとつ(12月7日頃)。雪が本格的に降りはじめる時季です。
冬至とうじ
二十四節気のひとつ(12月22日頃)。一年でもっとも昼が短く、翌日から少しずつ日が長くなります。
一陽来復いちようらいふく
冬至に陰が極まり、陽が兆すこと。悪いことが続いたあとに幸運が向くという、めでたい銘です。
厳冬げんとう
寒さの厳しい冬。凛とした空気感をあらわします。
寒暮かんぼ
寒い日の夕暮れ。灯火の恋しくなる時間です。
初雪はつゆき
その冬に初めて降る雪。心が改まるような喜びを伴います。
雪ゆき
冬を象徴する景色。積もる雪が世界を静けさで包みます。
雪明りゆきあかり
積もった雪がほのかに放つ明るさ。夜でも仄白く浮かぶ静謐な景です。
深雪みゆき
深く積もった雪。雪国の冬の情景をあらわします。
霜柱しもばしら
地面から立ち上がる氷の柱。踏むと音を立てる、冬の朝の風物です。
氷こおり
張りつめた氷。透明な冷たさが冬の澄んだ空気に通じます。
凍解いてどけ
凍ったものがゆるみ解けること。厳寒のなかの微かな兆しです。
寒月かんげつ
冬の夜空に冴え冴えと輝く月。澄みきった光が印象的です。
冬木立ふゆこだち
葉を落とした冬の木々。簡素な姿に凛とした美しさがあります。
枯木かれき
葉を落とした木。何もないところに趣を見る、侘びの心に通じます。
北風きたかぜ
冬に吹く冷たい風。身を切るような寒さをあらわします。
凩こがらし
木を枯らすほどの冷たい風。冬の到来を告げる音です。
冬凪ふゆなぎ
冬の海が風もなく静まりかえること。厳しさのなかの穏やかなひとときです。
千鳥ちどり
冬の水辺に群れ遊ぶ小鳥。友千鳥・磯千鳥など、意匠としても親しまれます。
寒椿かんつばき
寒中に咲く椿。冷たい空気のなかの紅が、いっそう鮮やかに映ります。
寒紅梅かんこうばい
寒のうちに咲きはじめる紅梅。春の兆しを先取りします。
夜咄よばなし
冬の夜長に灯火のもとで催す茶事。ろうそくの明かりだけで進む、この季節ならではのもてなしです。
短檠たんけい
夜咄の茶事で用いる背の低い灯火具。ほのかな明かりが茶室を包みます。
手燭てしょく
手に持つ小さな燭台。夜の露地で客を迎えるときに用います。
灯火ともしび
ゆらめく小さな明かり。冬の夜の茶席にあたたかさを添えます。
炉話ろばなし
炉を囲んで交わす語らい。心のほどける冬のひとときです。
埋火うずみび
灰に埋めて保つ炭火。静かに燃え続ける火に、冬の情趣が宿ります。
雪月花せつげつか
四季の美の象徴。冬は雪がその筆頭で、風雅の心を一語に込めます。
事始ことはじめ
12月13日、正月を迎える準備を始める日。京都の花街の挨拶でも知られます。
煤払すすはらい
一年の煤を払い清める行事。茶室も改めて整え、新年に備えます。
柚子湯ゆずゆ
冬至に柚子を浮かべた湯に入る習わし。無病息災を願います。
冬至南瓜とうじかぼちゃ
冬至に南瓜を食べる風習。運を呼び込むとされ、季節の暮らしを映します。
除夜の鐘じょやのかね
大晦日の夜に撞く百八の鐘。煩悩を払い、清らかに年を越します。
迎春げいしゅん
新しい年を迎えること。年末の茶席に、来る春への期待を込めます。
春待つはるまつ
厳しい冬のなかで春を待ちわびる心。冬至を過ぎた頃にふさわしい銘です。
12月の和菓子
柚子ゆず
柚子の香りと色を生かした冬の菓子。練切や饅頭のほか、皮を器にした「柚子釜」の趣向もあります。
雪餅ゆきもち
白いそぼろや道明寺で雪をまとった風情を表した菓子。ふんわりとした姿が冬らしさを伝えます。
初雪はつゆき
薯蕷饅頭やきんとんに白を効かせ、初雪の景を写した意匠です。
干支えと
翌年の干支を象った菓子。年の瀬から初釜にかけて、新年の喜びを先取りします。
寒紅梅かんこうばい
練切で寒中に咲く紅梅を写した意匠。冬の茶席に春の兆しを添えます。
埋火うずみび
こなしやきんとんで、灰に埋もれた炭火のほのかな赤みを表した意匠。冬の茶席の情景そのものです。
12月の茶の湯ごよみ
夜咄の茶事よばなしのちゃじ
日の短い冬(おおむね11月から1月)に催される夜の茶事。短檠や手燭のほのかな灯りだけで進み、闇と炎が織りなす独特の趣を味わいます。
事始めことはじめ
12月13日、新年を迎える準備を始める日。茶家や花街では、師匠のもとへ挨拶に伺う習わしが今も残ります。
煤払いと冬至
煤払いで茶室や道具を清め、新年に備えます。冬至(12月22日頃)には柚子湯や南瓜の風習があり、茶席の趣向にも取り入れられます。
除夜釜じょやがま
大晦日の夜に催す茶会。行く年を送り、来る年を迎える気持ちを一服に込めます(開催の有無は社中により異なります)。
茶花も銘も菓子も、地域や流派、その年の気候でずいぶん前後します。 ここに挙げたのはあくまで目安です。目の前の季節のほうを、どうぞ信じてください。
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