七夕に星をまつり、祇園祭の囃子が聞こえる7月。茶室では風炉の火を客から遠ざけ、水を思わせるしつらえや点前で涼を演出します。暑さの盛りだからこそ、一服の涼しさが最も深く沁みる月です。
7月の茶花
木槿むくげ
夏の茶花の代表格。朝開いて夕方にしぼむ一日花で、一期一会の風情が茶席に好まれます。白い花に底紅の「宗旦木槿」が特に有名です。
桔梗ききょう
凛とした青紫の星形の花。秋の七草のひとつですが、咲き始めは夏。つぼみが風船のようにふくらむ姿も愛されます。
河原撫子かわらなでしこ
細く繊細な花びらが涼しげな、こちらも秋の七草のひとつ。可憐な姿が夏の茶席に涼を運びます。
擬宝珠ぎぼうし
橋の欄干の擬宝珠に似たつぼみからこの名に。すっと伸びた花茎と淡い紫の花が夏の籠花入によく合います。
金水引きんみずひき
細い穂に小さな黄色の花を連ねる山野草。主役の花に添えて、野の風情を出します。
7月の茶道の銘
茶席では、茶杓(ちゃしゃく)やお菓子、掛物などに季節にちなんだ「銘(めい)」をつけて趣を添えます。 ここでは7月・文月の茶席で使われる茶道の銘を、読み方と意味・由来とともに51種ご紹介します。稽古やお茶会で銘を選ぶ際の参考にどうぞ。
七夕たなばた
五節句のひとつで、星をまつる7月の代表的な銘。
星祭ほしまつり
七夕の別名。星をまつり、技芸の上達や願いを託します。
星合ほしあい
七夕の夜、彦星と織姫が年に一度出会うこと。
織姫おりひめ
七夕伝説の織女星(こと座のベガ)。手仕事の上達を願う星でもあります。
牽牛けんぎゅう
織姫と天の川を隔てて向かい合う彦星(わし座のアルタイル)。
天の川あまのがわ
夜空を横切る星の帯。菓子の銘としても定番です。
銀河ぎんが
淡い光の川のように夜空を渡る星の集まり。天の川と同じ景を漢語で。
鵲の橋かささぎのはし
七夕の夜、鵲が翼を並べて天の川に架けるという伝説の橋。
梶の葉かじのは
七夕に願い事を書いた古い風習から。7月ならではの銘です。
笹舟ささぶね
笹の葉を折って作る小舟。七夕飾りや川遊びの、涼やかな趣を映します。
瀧たき
落ちる水の勢いと涼味。夏の掛物「瀧 直下三千丈」でもおなじみ。
白糸しらいと
一筋に流れ落ちる細い滝を糸に見立てた言葉。目にも涼を誘います。
布引ぬのびき
白布を垂らしたように落ちる滝の姿。神戸・布引の滝でも知られます。
清流せいりゅう
澄んで流れる水。見た目にも音にも涼を感じさせます。
真清水ましみず
清らかに湧き出る名水。ひとくちに涼を宿します。
岩清水いわしみず
岩間から湧き出る冷たい水。ひとくちの涼のイメージ。
苔清水こけしみず
苔むした岩間を伝って流れる清水。深山の静けさと涼を運びます。
山滴るやましたたる
青葉に潤う夏山の、みずみずしく生き生きとした姿をあらわします。
せせらぎ
浅瀬を流れる水のかそけき音。耳から涼を運びます。
水琴すいきん
水滴の落ちる澄んだ音。水琴窟のひそやかな涼を思わせます。
青海波せいがいは
半円を幾重にも重ねた波文様、また夏の海に立つ白波。涼やかで縁起のよい意匠です。
漣さざなみ
水面に立つ細かな波。かすかな風がわたる涼を感じさせます。
荒磯ありそ
波の打ち寄せる岩浜。夏の海の雄々しい景色です。
夕立ゆうだち
夏の午後、にわかに降っては上がる激しい雨。雨後のひんやりとした涼を呼びます。
白雨はくう
明るい空から降る夕立のこと。夏の季語です。
喜雨きう
日照り続きのあとに降る、待ち望んだ恵みの雨。
雲の峰くものみね
むくむくと湧き立つ入道雲。真夏の空の力強い景色です。
夏の月なつのつき
短い夏の夜に涼しくのぼる月。暑さを忘れさせるひとときです。
鳴神なるかみ
雷を神格化した呼び名。夕立とともに轟く夏の雷鳴。
涼風すずかぜ
暑さの中を吹き抜けるひとすじの風。
夕涼みゆうすずみ
日が落ちてから外に出て涼をとること。夏の宵のひとときです。
端居はしい
縁先に出て、夕風に涼むこと。夏の暮らしの一景です。
打水うちみず
庭や露地に水をまいて涼を呼ぶこと。茶事の露地でも大切な所作です。
青簾あおすだれ
青竹を編んだ簾(すだれ)。日を遮り風を通す、夏の室礼を映します。
風鈴ふうりん
風に鳴る音で涼を呼ぶ、夏の風物詩。
花氷はなごおり
花を封じ込めて凍らせた氷柱。見た目にも涼を尽くす夏の趣向です。
氷室ひむろ
冬の氷を夏まで貯えた室。涼のきわみを思わせる、雅な銘です。
団扇うちわ
あおいで風を起こす夏の道具。手もとの涼を象徴します。
心太ところてん
つるりとした喉ごしの涼菓。夏の口福を映す、遊びのある銘です。
蝉時雨せみしぐれ
降りしきる雨のような蝉の声。真夏の音の風景です。
空蝉うつせみ
蝉の抜け殻。転じて、この世やはかなさを表す古語でもあります。
蜩ひぐらし
夕暮れに「カナカナ」と鳴くセミ。ひぐらしの声に涼と哀愁が宿ります。
夏木立なつこだち
濃い緑が茂る夏の木々。木陰の涼しさを思わせます。
万緑ばんりょく
見渡すかぎりに広がる、夏の深い緑。
蓮はす
泥の中から清らかな花を開く、夏の池の主役。朝に咲く姿が尊ばれます。
夕顔ゆうがお
夏の夕に白い花を開くうり科の植物。『源氏物語』の巻名でも知られます。
祇園会ぎおんえ
京都・祇園祭のこと。7月の京をまるごと映す銘です。
山鉾やまほこ
祇園祭を彩る、豪華絢爛な山と鉾。動く美術館とも呼ばれます。
檜扇ひおうぎ
祇園祭のころ、京の町家に飾られる朱色の花。祭を象徴します。
鬼灯市ほおずきいち
浅草寺で7月に開かれる、ほおずきの市。夏の江戸の風物詩です。
富士詣ふじもうで
山開きの富士山へお参りすること。夏山の清々しさを映します。
7月の和菓子
水羊羹みずようかん
夏の菓子の代表。つるりとした喉ごしと控えめな甘さで、冷やしていただきます。
葛焼きくずやき
葛の生地を焼き目香ばしく仕上げた菓子。もっちりとした食感に夏の涼が宿ります。
天の川あまのがわ
錦玉羹やきんとんで夜空と星の帯を表した、七夕の時期ならではの意匠菓子です。
朝顔あさがお
練切で夏の朝の花を写した意匠。ひんやりした見た目も涼の演出です。
若鮎わかあゆ
求肥をカステラ生地で包んだ初夏〜盛夏の菓子。焼き印の鮎が清流を思わせます。
7月の茶の湯ごよみ
七夕の茶会
梶の葉や星に因んだ道具組・菓子で星祭りを楽しむ茶会。短冊や笹を取り入れたしつらえも見られます。
朝茶事あさちゃじ
夏の茶事の代表格。涼しい早朝に席入りし、暑くなる前に終える、夏ならではのもてなしです。
葉蓋・洗い茶巾・名水点
水指の蓋に梶などの葉を使う「葉蓋」、平茶碗の水音で涼を呼ぶ「洗い茶巾」、名水を客に味わってもらう「名水点」。目と耳で涼を届ける夏の点前です(流派により有無・扱いが異なります)。
祇園祭
7月の京都はひと月かけて祇園祭。祭にちなんだ道具組の茶会も開かれます。
※ 茶花・銘・菓子の季節は地域や流派、その年の気候によって前後します。ひとつの目安としてお楽しみください。
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