暑さの盛りが続く一方、立秋(8月上旬)を境に暦の上では秋に入る8月。お盆に先祖をまつり、京都では五山送り火が夏を送ります。残暑のなかにいち早く秋の気配を忍ばせるのが、この月の茶席のこころ。涼を尽くしたしつらえに、そっと初秋の風を添えていきます。
8月の茶花
芙蓉ふよう
朝に咲いて夕にしぼむ一日花で、木槿とともに夏の茶花を代表します。淡紅や白の大きな花が、残暑の茶席にやわらかな彩りを添えます。
女郎花おみなえし
秋の七草のひとつ。細い茎の先に小さな黄花を群れ咲かせ、野辺の秋を先取りします。すっと立つ姿が籠花入によく映えます。
秋海棠しゅうかいどう
うつむき加減に咲く淡紅の花。夏の終わりから秋にかけて咲き、しっとりとした風情が茶室の陰に似合います。
縞薄しますすき
葉に白い縞の入る薄(すすき)。穂が出る前でも、揺れる葉姿が涼と初秋の気配を運びます。
桔梗ききょう
青紫の星形の花で、秋の七草のひとつ。夏から咲き続け、8月の茶席では秋への橋渡しとして好まれます。
8月の茶道の銘
茶席では、茶杓(ちゃしゃく)やお菓子、掛物などに季節にちなんだ「銘(めい)」をつけて趣を添えます。 ここでは8月・葉月の茶席で使われる茶道の銘を、読み方と意味・由来とともに47種ご紹介します。稽古やお茶会で銘を選ぶ際の参考にどうぞ。
立秋りっしゅう
暦の上で秋の始まる日(8月上旬)。暑い盛りに秋の到来を告げます。
残暑ざんしょ
立秋を過ぎてなお残る暑さ。8月ならではの季節感を映す銘です。
処暑しょしょ
暑さがようやくおさまる頃という二十四節気(8月下旬)。
新涼しんりょう
秋になって初めて感じる涼しさ。残暑のなかのわずかな涼を尊びます。
初秋はつあき
秋の初め。まだ暑くとも、心はもう秋へと向かう銘です。
肇秋ちょうしゅう
秋の始まりを言う、雅やかな言葉。
秋めくあきめく
あたりがしだいに秋らしくなってくること。
秋近しあきちかし
まだ暑さのなかにも、ふと感じる秋の気配をあらわします。
朝涼あさすず
夏の朝にふと感じる涼しさ。朝茶事の趣にもかないます。
晩涼ばんりょう
日が暮れてからの、ひときわ深まる涼しさ。
秋日和あきびより
秋らしく晴れわたる、さわやかな空模様。
行合の空ゆきあいのそら
夏の雲と秋の雲が入りまじる、季節の変わり目の空。
初嵐はつあらし
秋の初めに吹く強い風。夏の名残を払う涼を運びます。
秋風あきかぜ
立秋のころ、ふと立つ涼やかな風。
荻の声おぎのこえ
荻の葉が風にそよぐ音。秋の訪れを耳で知らせる、古歌にも詠まれた銘です。
桐一葉きりひとは
桐の葉が一枚落ちるのを見て秋の訪れを知る、という故事から。初秋を代表する銘です。
白露しらつゆ
草葉に置く、白く光る露。秋の到来を静かに告げます。
朝露あさつゆ
朝の草葉に結ぶ、消えやすくはかない露。
露草つゆくさ
朝に青い小花を開き、昼にはしぼむ草。名も姿も涼やかです。
稲妻いなずま
夏の終わりの夕空を走る光。ひらめきと涼を感じさせます。
雲海うんかい
見下ろせば一面の雲。高原の涼と、雄大な夏の景を表します。
星月夜ほしづきよ
月がなくとも星明かりで明るい夜。澄みはじめた夜空を映します。
流星りゅうせい
夏の夜空をよぎる流れ星。8月は流星群の見ごろでもあります。
不知火しらぬい
有明海などに現れる光の異象。初秋の季語として知られます。
蜩ひぐらし
夕暮れに「カナカナ」と鳴くセミ。その声は早くも秋の近さを感じさせます。
法師蝉つくつくぼうし
夏の終わりに鳴くセミ。過ぎゆく夏を惜しむような声です。
空蝉うつせみ
蝉の抜け殻。転じて、この世やはかなさを表す古語でもあります。
蜻蛉とんぼ
すいと飛ぶ姿に、いち早く秋の気配を映します。
芙蓉ふよう
朝に咲いて夕にしぼむ、夏の名残の一日花。
女郎花おみなえし
秋の七草のひとつ。細い茎に黄花を群れ咲かせ、野辺の秋を告げます。
藤袴ふじばかま
秋の七草のひとつ。ほのかに香る、慎ましい花です。
撫子なでしこ
秋の七草のひとつ。可憐で涼やかな花姿が愛されます。
泥中の蓮でいちゅうのはす
泥の中から清らかな花を咲かせる蓮。清浄・不染の象徴です。
盂蘭盆うらぼん
お盆の正式な呼び名。先祖をまつるこの時季にちなみます。
迎え火むかえび
お盆のはじめ、先祖の霊を迎えるために焚く火。
送り火おくりび
お盆の終わり、先祖の霊を送る火。夏を送る情感を込めます。
門火かどび
盆に門口で焚く、霊を迎え送るための火。
大文字だいもんじ
京都の五山送り火(8月16日)のこと。夏の京を締めくくる銘です。
灯籠とうろう
盆に灯す灯籠。先祖を迎え送る、この時季ならではのあかりです。
灯籠流しとうろうながし
灯籠を川や海に流して精霊を送る、盆の行事。
精霊舟しょうりょうぶね
盆の終わり、霊を送るために川へ流す舟。
地蔵盆じぞうぼん
8月下旬、子どもの健やかな成長を願う地蔵菩薩の縁日。関西で親しまれます。
走馬灯そうまとう
影絵が回る夏の灯り。移ろいゆくものの象徴でもあります。
花火はなび
夏の夜空を彩る大輪。ひとときの華やぎとはかなさを映します。
遠花火とおはなび
遠くに上がり、音だけが遅れて届く花火。夏の終わりの情趣です。
秋扇あきおうぎ
秋になり、しだいに使われなくなっていく扇。夏の名残を惜しみます。
玉簾たますだれ
簾(すだれ)を美しく言った言葉。風を通し日を遮る、夏の室礼を映します。
8月の和菓子
錦玉羹きんぎょくかん
寒天を煮溶かして固めた涼菓。透明な地に金魚や水面を写し、夏の水辺の涼を目で楽しませます。
葛切りくずきり
葛をのばして冷やし、黒蜜でいただく涼菓。つるりとした喉ごしに涼が宿ります。
蕨餅わらびもち
蕨粉のぷるりとした餅にきな粉をまぶした夏の菓子。ひんやりと口どけよくいただきます。
琥珀糖こはくとう
寒天と砂糖でつくる干菓子。外は砂糖の結晶、中は寒天という宝石のような透明感が涼を誘います。
初萩はつはぎ
きんとんで咲き初めの萩を写した意匠。菓子の色にいち早く秋の気配を託します。
8月の茶の湯ごよみ
お盆(盂蘭盆)
先祖の霊をまつるお盆の時季。精霊や供養にちなんだ道具組・銘で心を寄せる茶席も見られます。
五山送り火
8月16日、京都の夜空に「大文字」などの火が灯り、夏を送ります。送り火にちなむ道具組の茶会も開かれます。
立秋と秋への移ろい
立秋(8月上旬)を境に、掛物・花・銘を少しずつ秋へと寄せていきます。残暑のなかに秋の気配を先取りするのが、この月の趣向のかなめです。
夕去りの茶事ゆうざりのちゃじ
日が傾いて涼しくなる夕刻に席入りする夏の茶事。暑さを避け、行灯のあかりのなかで涼を味わうもてなしです(流派・亭主により扱いは異なります)。
※ 茶花・銘・菓子の季節は地域や流派、その年の気候によって前後します。ひとつの目安としてお楽しみください。
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